土壁

激しく変化する気温や大雪に翻弄されているうちに、再び春がやってきましたね。

さて、ちょっと音楽とは関係がないのですが、私は木と粘土で作った家に住んでいます。伝統的な木造軸組工法による真壁の家ですが、床や壁を合わせて、確か60トンくらいの粘土を使っているので、通常よりは壁がかなり厚く、土蔵にたくさんの柱と窓がついているような家です。これは私のスイス人の連れ合いが、素人ながら基礎工事から自分でこつこつと作ったもので、途中からは住みながら作っているのですが、6年目に入った今も現在進行形で工事が続いています。音楽室ができたのは2年前で、不便なことは山のようにあったし、気の遠くなるような毎日でしたが、自然素材に囲まれて生活していると、人間の原点に帰ったような気がします。何がほんとうに必要か。何をなすべきか。土壁が問いかけてきます。このことはもちろん、私の音楽への関わり方にも強い影響を与えています。

最近、「まちや紳士録」という映画をみました。これは、縁あって福岡県の八女に移り住んだ監督による、素朴で力強いドキュメンタリー映画です。重要伝統的建造物群保存地区に選定されている八女市福島地区。住人の方たちが力を合わせて古くからの町並みの保存に奮闘する様子や、人々の暮らしぶりが描かれており、古いものの価値を知り、人の思いや技、経験を語り継いで生きていこうとする人たちの表情が生きています。使い捨ての風潮に踊らされ、便利な物だけに支配されがちな毎日。でも、これからの日本が進む方向は、毎日の生活で消費をしている私たち一人一人の行動や意識の在り方が決めていくのだ、という思いを強くしました。

渋谷のシアター・イメージ・フォーラムで、3月21日(金・祝)までの毎日、午前11時から上映されていますので、ご興味がおありの方は是非ご覧ください。

ホームページは www.yame-machiya.info です。

 

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