6月19日に、二台ピアノでの本番が終わりました。黒川さんとは初めての共演でしたが、お互いに室内楽は頻繁に行っているので、互いの音を聴き合って挑発したり調和したりの密なアンサンブルにはなったと思います。部分的には反省点も多々ありますが、前進あるのみ! (写真は終演後のステージ裏にて。)
それにしても、パガニーニの主題はいかに作曲家たちの変奏意欲を掻き立てることか。二つのフレーズがそれぞれ繰り返されて24小節、かつ24秒くらいにしかならないほどに短く、また、和声としては一度と五度の交代の後、斜に構えたようなカデンツで閉じる。まるで「全てはこういうものなんだよ」とでも言ってるような、ある種のデカダンな雰囲気を漂わせるけれども、確たる意味は持たず、その後に続く変奏によってドラマティックな展開をさせることができる。このことが大きな魅力となっているのでしょう。
ブラームス 、ラフマニノフも素晴らしい変奏曲を作りましたが、ルトスワフスキも、この、「所詮は意味を持たないのか?」ということに対する静かな怒り、激しい抵抗、アイロニーを、見事に音にしたように思います。
過酷な運命を背負ったポーランドに生まれ、二度の世界大戦を経験したルトスワフスキ。ショパンより100年と少し後に生まれた彼の音楽は、むせかえるような生のエネルギーとブラックなユーモアが満ち溢れています。音楽による強烈なレジスタンス。ポーランドの歴史を読むと、今更のように、支配欲、征服欲、そのほか様々な欲望に翻弄されてしまう人間や国の姿が見え、現代では、それがもはや誰にも止めることのできない巨大なシステムとして不気味にうごめいていることが、生々しく感じられます。